LA VIE EN ROSE, ?  

Argent_JPN 53M
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6/2/2006 11:49 pm

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6/12/2006 10:33 am

LA VIE EN ROSE, ?


仰向けの状態で目が醒めたのは外がしらじらと明るくなりかけたころだった。窓越しに光が入って、六畳ほどの部屋の中も見通しがきく。
寝起きというのはしばらくボケた状態なので、自分がなぜこんなに早く目ざめたのかは、どこかに違和感を感じつつも最初よくわかっていなかった。

ふと隣に目をやると、数時間前背中合わせにひとつのフトンをシェアして寝たはずのサトウさんが見えない。へんだな、もう起きてどこかへ行ったのかな。回らぬ頭でそんなことを思っていると、次第に違和感の所在が明らかになってきた。

腰だ。しかしフトンがこんなに腰だけを押さえるってことはないよな。

そう思って下のほうへ目をやると、フトンが妙な形に盛り上がっている。盛り上がったその中身が動くのと、腰への押さえつけが連動している。

サトウさんがフトンにもぐっている。俺の腰にへばりついているのはサトウさんだ。

それを悟って、ようやく忙しく頭が回転しはじめた。

  1.サトウさんは寝ぼけて奥さんの夢でもみているのでは。
  2.幼児化してママに抱きつく夢でもみているのでは。
  3.ていうか早く現実を直視しろ。

そんなことを考えている間にも、フトンの中のサトウさんはだんだん遠慮なく両手でひとの腰を押さえ、トランクスの上からほおずりなどしている様子である。早急に3であると結論した後、すぐに対策協議に入る。

  A.ガバと飛び起きて、サトウさんをぼこぼこにする。骨折した友人とサトウさんとの関係がその後どうなろうと知ったことか。
  B.せっかくのご招待だから、素直に応じろ。骨折した友人はともかく、サトウさんとは以後強固な絆で結ばれるかもしれぬ。

骨折した友人という第三者が介在するため、こちらの協議には十数秒を要した。しかしサトウさんもその十数秒を無駄にする気はないらしく、トランクスの上からウチのムスコを正確に探り当て、指でなぞっている。
そこでムスコ側に応ずる姿勢があれば、Bにいく手もあったのだが、どうやらその気配はない。

よしっ。対策は「C」でいくことに決定した。数十秒かけて、細部まで作戦シミュレイションをする。…演出はカンペキだ。作戦発動準備は完了。
この間、筋肉の緊張などで相手にこちらの策を気取らせぬようにするのがいちばん大変だったかもしれない。

わざと間の抜けた大きめの声で、
「ん、ふぁ〜あ。あれ?もうこんな時間だあ。」
大きく伸びをし、わざとゴソゴソと起き出す気配を見せる。

フトンの中から、サトウさんがころりと転がり出てきた。委細かまわず、

「いやいやこんな時間になっちゃってたんだねえ、んじゃ俺、行くわ」

言いながら、急いでいるとわからないように、しかし大急ぎで脱いだジーンズを穿く。

アパートの建物を出、早朝のまぶしい日差しの中、足取りも軽く、だんだん小走りに、やがてほとんど全力疾走になっていったのだった。

サトウさんの部屋に、脱いだ靴下を忘れてきたのに気付いたのは数時間後になってからだった。
取りに行くつもりは全くない。

−fin−

  
  



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